iPhoneが今になって「レッド」を出す深い理由

iPhone 7/iPhone 7 Plusに新色となる「(PRODUCT)RED Special Edition」が発表されました!これは、エイズ撲滅運動の10周年を記念する製品として発売されるようです。なお、(RED)とは(PRODUCT)REDという共通ブランドの商品を開発・販売して得た収益の一部を世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)に寄付して、アフリカのエイズ対策プログラムを支援しようという仕組みです。ロックバンド「U2」のボノと、国際NGOであるDATAのボビー・シュライバーが発起人であり、2006年1月26日にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで発表されました。最近は、日本でもHIVに感染している人が増えているとのことですので、今後は日本でも(RED)へ注目が集まるかもしれません。

アップルは米国時間3月21日に、iPhone、iPadなどの主要製品に関する発表を行った。この中で注目されるのは、iPhoneに新たに用意された「赤」モデルの存在だ。

■エイズ撲滅運動(RED)は10周年の節目

新たにiPhone 7・iPhone 7 Plusに追加されたのは「(PRODUCT)RED Special Edition」。(RED)とは2006年1月にU2のボノらが提唱して始まったエイズ撲滅運動だ。アップルは、これまでも(RED)に参加してきたが、iPhone 7・iPhone 7 PlusのREDバージョンは、その10周年を記念する製品との位置づけもあるという。

アップルは、今回のiPhoneのREDモデルについて、「年間を通じて購入することができる製品に加わった」と述べており、その他のラインアップは、iPod各製品、iPhone 7 Smart Battery Case、iPhone・iPadのケースやApple Watch用バンド、そしてBeatsブランドのBeats Solo 3 Wirelessヘッドフォン、Beats Pill+スピーカーとなっている。

iPhone 7は、言わずと知れた2016年9月に発売されたアップルのフラッグシップスマートフォン。4.7インチ、5.5インチの2つのサイズで展開されており、128GBモデル、256GBモデルには、真っ黒かつ光沢仕上げの「ジェットブラック」が設定された。

今回のREDモデルも、ジェットブラック同様、もっとも価格が低く抑えられている32GBモデルには設定されず、128GB、256GBモデルにのみ用意される。日本における価格は128GBモデルで価格は8万3800円(税別)となっており、3月24日から発売される。

アンテナラインの色は?

REDモデルは、前述の光沢仕上げのジェットブラックとは異なり、ブラック、ゴールド、ローズゴールド、シルバーなどと同じマット仕上げとなっている。しかし、ブラック以外のモデルでアクセントとして残されているアンテナラインは、REDモデルでは赤いラインが採用された。

そのため、光の当たり方によっては、アンテナラインが目立ちにくく、真っ赤なアルミニウムの板というイメージを得ることができる。

これまで、iPhoneを赤い装いで利用するにはケースの助けが必要だった。純正品では、シリコンケースやレザーケース、前述のバッテリーケースが用意されてきたが、REDモデルのiPhoneの登場で、ケースなしでも、赤いコーディネートを楽しめることができるようになった。

■(RED)とアップル

アップルは例年12月1日の国際エイズデーに合わせて、10年前から参画している(RED)のキャンペーンを展開してきた。2016年にも行われており、iPhone 7に対応するシリコンやレザーの赤いケースはこのときに追加されている。

(RED)には、米国の様々な企業が参画しており、GAP、コカ・コーラ、スターバックスといった米国の消費者向けの製品を作る企業に加え、セールスフォース・ドット・コムやドイツのSAPといったB2B企業もパートナーに名を連ねている。

(RED)の収益の100%が、グローバルファンドに寄付され、エイズウィルスの母親から子供への感染撲滅を目的とした活動に使われている。2006年から4億6500万ドルを集めたが、そのうち1億3000万ドル以上が(RED)によるものだ。

(RED)によると、2005年にHIVに感染して生まれてくる子供の数は毎日1200人だったが、こんにちは400人にまで減少させることに成功し、この数字を近い将来、ゼロにすることができるとしている。

(RED)の赤い製品は、エイズ撲滅運動を広めることになっているが、ユーザーからすると、真っ赤なモデルが欲しいという、慈善活動とは異なる動機での購入が大半になるのではないだろうか。その点で(RED)は、小売りビジネスにおける、1つの成功したキャンペーン事例と見ることができる。

さて、アップルはなぜこのタイミングで、iPhone 7に対して新しいモデルを追加することになったのか。

なぜこのタイミングなのか

前述の国際エイズデーのキャンペーンに合わせるのであれば、2016年12月にREDモデルのiPhoneをリリースするのが自然だったのではないだろうか。なぜ2017年3月なのだろうか。

このことについて考える上で3つのポイントを指摘したい。

■iPhone 7赤モデルが今登場する3つの理由

1点目は、iPhoneが品薄だったことだ。

2016年9月の発売以降、米国でのiPhoneの状況をチェックしていたが、特に5.5インチサイズのiPhone 7 Plusは品薄状態が続いてきた。そのタイミングで新色を投入しても、思うように製品を供給できなかったとみられ、また「やっぱり赤がいい」と予約を変更する顧客の対応にも問題が生じることが考えられた。

2点目は、3月リリースの成功だ。

アップルは2016年3月にiPhone SEを投入した。当時の最新モデルであったiPhone 6sと同等のスペックを、iPhone 5sと同じ4インチボディに搭載した製品で、小さなサイズを好むユーザーと価格の安さから、成功した製品となった。

アップルは今回の発表のタイミングで、iPhone SEの保存容量を16GB・64GBから、32GB・128GBへと倍増させ、価格を据え置いたアップデートを施している。16GBのiPhoneについては、スマートフォンの体験が満足にできないとの批判があり、米国では訴訟が起きるなど問題になってきた。

iPhoneのメジャーアップデートから半年のタイミングでの新製品投入は、顧客の注目をiPhoneに向けておくことに加え、真っ先に購入しなかった人に対して多くのオプションを与える点で、ホリデーシーズン偏重だったiPhoneの製造と販売をならす効果を期待できる。

3つ目のポイントは?

3点目はスペックからスタイルへの移行だ。

これはスマートフォン市場をアップルの得意分野に引き込む狙いがある。スマートフォンのスペックはまだまだ進化の一途を辿ることが予測できる。特にバッテリー技術については、多くの人々がさらなる性能の向上を望んでいる。

しかし、今日のスマートフォンの一般的な使い方、すなわち、電話をする、SNSでコミュニケーションを取る、写真を撮影する、といった一般的な使い方に加え、スマートホームやライドシェア、音声認識などの新しい領域を含めても、2年前のスマートフォンで十分役に立つ。

■アップルの優位性を高止まりさせる戦略

iPhone SEが、2015年リリースのモデルとして存続している点から、アップルもそうした考えを持っているとみてよいだろう。

これまで発展途上だったスマートフォンはスペックが重要だったが、アップルはパソコン市場においても、スペック競争に終始しないことを強調してきた企業だ。iPhoneがスペック重視から、デザインや色を強調する展開へと移行することは、「スマートフォンの価値観をスタイルへ」という大きなコンセプトの転換となる。

「真っ赤なiPhoneが欲しい」という動機は、スペックとは異なる価値観で顧客の行動を生み出すことになるからだ。アップルはiPhone10周年という節目を利用し、スマートフォンの価値観転換をアピールしようとしているのではないだろうか。

もちろん、スペック面やデザイン面で最先端をいくハイエンドのスマートフォンはリリースし続けている。一方ではスマートフォンの買い換え周期の長期化傾向が見えてきており、アップルはアプリやApple Musicなどのサービス収益の成長に力を入れてきた。スタイルとアプリを重視したスマホ市場こそが、アップルの優位性を高止まりさせるからである。

REDモデルには、iPhone 10周年の年に、スマートフォンの価値観転換をより明確に示していこうとするアップルの戦略も隠されているのではないだろうか。

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