<自称イクメン>活躍アピールに女性がいらつく理由

母親であり、主婦である私からしても自称イクメンという男の人たちにイラつくことも多くあります。というよりそういった旦那さんを持つ奥さんに共感できる部分が多くあるのです。簡単に言うと外面がいい旦那に限ってイクメンと勘違いされていることです。実際に家にいる時には対して動いていないくせに、誰かがいるとテキパキ動き出したり、そんな姿を見て周囲から褒められているとイラっとしてしまいますよね。本当に家事や育児に協力的なイクメンはさほど存在しないのではないでしょうか。

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2016年は、「イクメン」をめぐるさまざまな議論がありました。家事育児に積極的な男性を増やす効果が期待されるなか、言葉だけが一人歩きするような事態も起きました。藤田結子明治大教授(社会学)が、現代の「イクメン事情」を読み解きます。

宮崎謙介元衆議院議員が1カ月の育児休業を取得する意向を示したのが2015年暮れのこと。「イクメン議員」として話題になり、各メディアに登場したものの、その後妻が入院中に他の女性と不倫をしたことがばれて、今年2月に議員を辞職しました。

最近では、4人の子供を育てているモデルの中林美和さんが、育児に熱心として知られるミュージシャンの夫に対してツイッターで、「家事育児は100%私。プラス仕事。たまに夫に子供のこと頼むと、体温計がないことでイライラされる」「外面だけが良くて吐き気がする」などと心情を吐露し、母親たちの共感を呼びました。

さらに、女性向けメディアには、「自称イクメン」「偽イクメン」「なんちゃってイクメン」「イクメンもどき」などの言葉も現れ、女性からの「イクメン」批判が多く見られるようになりました。なぜ「イクメン」という言葉が女性たちをいらだたせるのでしょうか。

◇外面イクメンは家事育児を減らしてくれない

その理由の一つとして、「イクメン」という言葉が、一部の男性を利することはあっても、女性の家事育児をたいして減らしてはいないことに、女性たちが薄々気づき始めたことがあります。

小林純子さん(30代会社員、仮名)もその一人。純子さんは働きながら息子と娘を育てています。会社員の夫は積極的に保育園の行事に参加するなど、周囲で「イクメン」と評判です。

しかし、実は夫は仕事第一で、残業や出張を繰り返し、家事育児は純子さんに任せっきり。純子さんがもっと育児をしてと頼むと、「俺は仕事をがんばって、ゴミを捨てたりもしている。なぜ文句をいわれなきゃならないんだ」と言います。

ある日、息子が保育園で発熱し、すぐに迎えに来るよう電話がかかってきました。特別に重要な会議に出ていた純子さんは夫に電話し、「どうしても会議を抜けられないので迎えに行ってほしい」と頼みました。すると夫は「俺も行けないから」と、あっさり電話を切ったのです。

純子さんは自分の経験から、「イクメン」と名乗る男性ほど、「本当は育児していないんじゃないの?」と思わずにはいられないそうです。

◇“イクメン大活躍”の裏に妻の献身

東京都で女性活躍に関わる活動をしている中村美穂さん(30代団体職員、仮名)は、知人の「イクメン」Aさん(30代男性)の存在に複雑な思いを抱いています。

Aさんは専門職として働きつつ、「イクメン」の看板を掲げて自治体の委員をしたり、講演をしたり、メディアに頻繁に登場したりと大活躍しています。Aさんは平日夜の自治体の会議にも、休日の講演にも出かけていきます。

しかし、美穂さんはある事実を知っています。Aさんが「イクメン」として表舞台で活躍する間、Aさんの妻がほとんど家事育児をして、Aさんの「イクメン活動」を支えているのです。

子育て関連イベントで美穂さんとAさんが同席したときのことです。Aさんが育児に関して発言するたびに、参加した高齢女性たちは「えらいわねえ」と感心してみせます。しかし、仕事と育児の両立に追われる美穂さんや他の女性が発言しても、決して「えらいわねえ」とは言われません。

Aさんの「イクメン」活動は、社会に良い影響を与えるかもしれませんが、彼の妻の家事育児負担が重いままという矛盾に、美穂さんは何だかもやもやするのです。

◇父親たちが当たり前に育児をする日は来るか

「イクメン」の言葉は、博報堂のアートディレクター・丸田昌哉さんが考案し、その後2010年に当時の長妻昭厚生労働相が「イクメンという言葉をはやらせたい」と国会で発言して、全国に広がりました。

実際、家事育児を多く分担する父親も出てきています。「男性は仕事が第一」という価値観が根強い社会で、男性も積極的に育児を、という意識を広めた「イクメン」の活動は、とても重要です。

しかし、ある調査では、30代男性の平日の家事時間(「子供の世話」含む)は、10年が45分、15年が44分とむしろ減っています(NHK放送文化研究所 「国民生活時間調査」)。男性の育児休業取得率は、10年1.38%、15年2.65%と、わずかに増えただけです。

この6年間、「イクメン」という言葉の広がりに比べて、子育て世代の男性の家事育児時間はそれほど増えていません。先の調査では、30代女性の家事時間は10年が5時間23分、15年が5時間29分と、女性の分担割合が圧倒的に多いままです。

「イクメン」という言葉、またはイクメンアピールは日常的に聞こえるようになりましたが、母親たちのしんどさはたいして軽減されていないのです。そのため、「イクメン」という言葉が炎上しやすくなっています。

「イクメン」という言葉がようやく浸透し、次の段階で、男性の「本当の育児行動」が増えていくのでしょう。「イクメン」の真の価値は、今後、長時間労働が改善され、父親たちが当たり前に育児を「する」ようになるかどうかにかかっています。

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