<テレワーク>ITだけで普及無理 「出社しない」意識必要

昔であれば、仕事を家に持って帰るという行為は、機密事項を持ち出すという事で禁止されている会社が多かったような気もしますが、実際には就業時間中に終わらない仕事は、みんなこっそり自宅でも仕事を熟していたと思いいます。ただ膨大な資料を持ち帰るのではなく、PC上でデータを管理して、会社でも出先でも自宅でも同じように仕事ができる環境のあるテレワークは、現代の仕事のあり方なのかもしれません。長時間労働がどこの企業でも問題になっていますが、これであれば、あまり仕事の時間に縛られることもなく、決められた仕事量を時間に追われることなく取り組むことができそうです。

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遅くまで残る大手広告代理店の長時間労働が問題視され、ワーク・ライフ・バランスが改めて注目される中で、子育てや介護と仕事を両立させるため、出社せずに自宅やサテライトオフィスで働く「テレワーク」の普及が叫ばれている。こうした働き方が普及するには、社外から社内システムにつながるIT関連の投資が不可欠だ。ただ、先行導入した企業によると、社内制度の整備だけでなく、仕事のやり方の見直しもカギになるという。【小島昇】

テレワークは、インターネットを活用して自宅などで働く手法だが、単なる在宅勤務にとどまらない。営業先や移動中の車内から日報を提出してオフィスに戻らず、そのまま帰宅して長時間勤務を回避できる。休日や深夜の急なトラブルにも対応できる。出産や育児でキャリアが中断する女性を支援する切り札としても、有望視されてきた。

パソコン(PC)には、ネット経由で別のPCから接続して操作する「リモートアクセス」や「リモートデスクトップ」と呼ばれる機能がある。例えば、自宅のPCから職場の机に置かれた持ち出し禁止のPCを使うことができる。職場のPCからでないと社内システムにアクセスできないためで、こうしたシステムを使う。社外秘の営業データを出先から参照したり、業務支援ソフトを利用したりできる。

◇スプラッシュトップで社外から

キリングループで乳製品の製造・販売の小岩井乳業(東京都中野区)は、14年8月からリモートデスクトップのクラウドサービスを提供するスプラッシュトップ(東京都千代田区)のサービスを利用する。以前からITを活用した営業活動の効率化に取り組んできたが、2010年に流行した新型インフルエンザと、11年の東日本大震災による交通機関の混乱で出勤できない状況が発生したことから、リモートアクセスの必要性が社内で高まった。このため、災害など緊急事態に対応するBCP(事業継続計画)の観点から本格導入につながった。

小岩井乳業情報システム部顧問の鎌田出さんによると、すぐつながる通信の安定性や、画面に社内PCと同じキーボードが配列される使いやすさを評価した。鎌田さんは「ITリテラシーが必ずしも高くなくても使える。レスポンス(反応)も速い」と話す。現在はタブレット端末のiPad(アイパッド)70台も営業スタッフと部長以上のマネジャーに支給され、利用されている。特にトラブルはないという。

主に外回りの営業スタッフ支援として導入したスプラッシュトップだったが、内勤の社員も利用している。女性の利用第1号となったのは、マーケティング部の三科千帆さんだ。2人の子供の出産と育児休暇を経て復職したが、その間システムを利用した。「休職中も社内の作業の様子がわかり、復職もスムーズだった」という。社内では「つながるくん」と呼ばれて親しまれているそうだ。

◇自社開発の支援ツールを活用

独立系ソフトウェア開発の富士ソフトも、スプラッシュトップを14年から導入し、3000人以上の社員が利用する。BCP対策のほか、私有PCやタブレット端末を業務で使う「Bring Your Own Device(BYOD=自分のデバイスを持ち込む)」で活用している。

同社の夏休み明けだった今年8月22日の月曜日は、台風9号の影響から電車の遅れで通勤できない社員1000人以上がリモートアクセスで利用した。業務に大きな支障はなく、BCP対策の有効性を証明した。前川政喜・執行役員管理本部副本部長は「4月の熊本地震では熊本オフィスの社員が在宅で使った。今年は地震と台風で役に立った」と話す。

システム会社なので、テレワークを支援するシステムを自社開発し、販売している。「smartBYOD おしごとちゅう」は、業務に必要なシステムに私用のスマートフォンからアクセスする管理ツールで、電話や通信費を公私に分けて集計する。一方、「moreNOTE」は、会議資料を閲覧するペーパーレスシステムで、参加者同士で加筆や添削ができる。サーバーで一元管理する文書はタブレットに残らず、端末の紛失や盗難にも安心という。

◇「紙」撤廃の覚悟も

1989年から在宅勤務を制度化するなど、同社は早くからワークスタイルの変革に取り組んでおり、13年には全社員が利用できる在宅勤務制度の本格導入に至った。多くのエンジニアを抱え、顧客先で開発業務もするシステム会社には、時間や場所にとらわれずに働ける環境の整備は避けられないことだった。

執行役員として社内情報システムの整備に取り組んできた山岡寛典顧問は、「社内で使えないものは客に薦められない」と、実際に業務で使えるものを目指して開発してきた経緯を説明する。タブレットを使ったペーパーレスの役員会議も12年10月からスタートしている。

ただ、テレワーク普及のハードルの高さも、山岡さんは実感している。自社で利用するシステムを説明しても、多くの企業が導入に二の足を踏んでしまう。山岡さんは「就業規則を整え、社員に(評価で)不公平感が出ないようにする。在宅勤務の人は実は働いていないと見ないことが大事だ」と話す。そして、テレワークの本格導入には、経営トップの意識改革が最も重要という。「ペーパーレスの会議にトップが慣れること。自分への報告書を『紙で出せ』と部下に言っていたら(テレワークは)導入できない」と話している。

◇11月はテレワーク月間

働き方改革で政府は11月を「テレワーク月間」としてキャンペーンを展開中だ。28日には東京都内でイベント「働く、が変わる」を開き、パネルディスカッションなどが行われる。お膝元の中央省庁の実施状況は、首相官邸を除く22の政府機関のうち13機関で、9機関は試行段階にとどまっており(総務省まとめ)、さらなる普及が求められている。

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