ハロウィンのコスプレは法に触れる可能性があります

もともとは日本でハロウィンの風習はなかったのですが、年々外国の影響を受け、今ではハロウィンのイベントが年間イベントで一番興行収入があるようです。コスプレや飾り付けなど色々と費用がかさみます。周囲も気合を入れてくるから自分もクオリティを上げなければならない、そんな競争心から年々増えていくのです。あまり興味がないと言っている人でも、カチューシャくらいの飾りは身に着けていますよね。しかし露出の多い洋服で歩き回ったり、本物そっくりの銃を持ち歩いたりと、法スレスレの格好で大勢のお人が街を歩いている様は異様ですね。

image

<コスプレで街を歩くのを楽しむ日として定着したハロウィンだが、どんな格好をしても自由かというと、そうとは限らない。著作権法や軽犯罪法、銃刀法、道路交通法など法による制限を、事前によく知っておくべきだ> (写真は昨年の神奈川県川崎市のハロウィン・パレードより)

10月31日はハロウィンである。日本ではここ数年、堂々とコスチュームプレイ(コスプレ)をして街を歩ける日として急速に定着した感がある。

先日、ある個人経営の居酒屋で飲んでいたところ、ハロウィンに関する話題となった。その際、ご年配の大将から発せられた「去年はここに魔法使いの格好をした女が入ってきてさ、なのに普通に飯食ってたから、気持ち悪かったよ。今年は出入禁止にしようか」との言葉が、未だに脳裏から離れない。

日本では大原則として、どんな服でも着ることができる「ファッションの自由」が保障されていると考えていい。表現の自由を保障する日本国憲法21条1項や、個人の幸福を追求する権利を保障する同13条が、それを実質的に裏付けている。
◆日本国憲法 第21条1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

◆日本国憲法 第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

よって、ハロウィンにコスプレを楽しむ自由も、最大限に保障されなければならない。

【参考記事】写真特集:ハロウィン around the World

一方で、居酒屋の店主が、ハロウィンのコスプレをして店内に入ってきた客を追い出すことも、それはそれで法的に問題ないのである。店舗の責任者は「施設管理権」を持っているからだ。店内で客がどのように振る舞うべきかの基本ルールに関して、主導権は店舗側が握っている。

高級レストランなどで「ドレスコード」が設定されていることがある。それに準じて、ハロウィンのコスプレが店の雰囲気を壊すと判断すれば、出入口に「コスプレのお客さん、お断り」の掲示をして、一部の人々の立ち入りを禁じることもできる。

学校や職場では、生徒や従業員に対する施設管理権が、さらに厳しく及ぼされる場合がある。生徒や従業員に対して、制服など特定の服装が指定されていれば、よほど不合理な指定でない限りは従わなければならない。

では、店に入らず路上を歩いているだけなら、どんなコスプレでも自由なのか……といえば、基本的にはその通りなのだが、若干の例外があるので注意したい。具体的には以下の通りである。

警察官や自衛官そっくりなコスプレの制限

軽犯罪法1条15号は、「資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者」について、処罰(最高で29日間の身柄拘束)する規定を置いている。

よって、リアルすぎる警察官や自衛官のコスプレで、街のみんなから注目を集める自由は認められていない。ニセ警官やニセ自衛官がその辺をうろついていれば、社会に無用な混乱を引き起こしかねないからである。警察組織や自衛隊は国民からの信頼を損なってしまう上、詐欺や強要など、さらに重大な犯罪の温床にもなりうる。

消防士、海上保安官、駐車監視員などについても、本物にそっくりな制服や制帽を作って着てまわれば、軽犯罪法に抵触する危険性がある。逮捕まではされなくとも、少なくとも警察の職務質問の対象にはなりうる。

ただし、同じ警官コスプレでも、日本のものとは明らかに異なるデザイン(外国の制服や架空の制服)であれば、処罰の対象にはならない。

肌の露出が過剰なコスプレの制限

軽犯罪法1条20号は、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」について、処罰(最高で29日間の身柄拘束)する規定を置いている。

常に手入れを怠らず、筋トレやジョギングで鍛え上げるなどしており、「ハロウィンの日には、自慢のボディで皆から注目を浴びよう」と考えている方は、ボディの露出の程度に注意を要する。

「その他身体の一部」には、乳房、へそ、脇腹なども含まれる(立花書房刊『軽犯罪法』より)。海パンやビキニなどの水着に匹敵する露出度の服で市街地を出歩くことは、軽犯罪法に触れる可能性が高い。また、下半身の露出が極端であれば、軽犯罪法を通り越して、公然わいせつ罪(最高で懲役6か月)で検挙されるおそれがある。

不特定多数の人通りがありうる場所であれば、屋内か屋外かを問わない。個人の自宅の中であっても、庭や窓ぎわなど、容易に通行人の目に触れる場所であれば成立しうる。

では、ホットパンツやミニスカートで太ももを晒したり、ローライズで臀部の上半分が見えているデニムを穿いたりしていれば軽犯罪法違反なのか……といえば、一概にそうとも言えない。

この条文は、適用範囲を狭める解釈の余地が十分にあるからだ。「公衆にけん悪の情を催させるような仕方で」「みだりに」といった言葉で歯止めがかかっている。全体的なバランスからして健全なファッションとして成立していれば、露出度が多少高かろうと、社会の風紀を乱すわけではないと反論することは可能だ(むしろ、それを街中でジロジロ見ようとする側が悪い)。

問題を起こした有名人などに扮したコスプレの制限

ウケを狙って、話題の政治家や芸能人、スポーツ選手などに扮する人もいる。モノマネをするだけなら問題ないが、調子に乗って、本人が我慢できないほど社会的名誉を傷つける発言をしたならば、名誉毀損や侮辱の罪に問われたり、損害賠償を請求されたりするリスクがある。

また、社会的名誉は、企業などの法人にも認められている。たとえば、ハロウィンでバイト先の制服を着て、街を練り歩き、ついでにそのバイトの実態や待遇について、一方的な誹謗中傷を具体的に主張してまわれば、バイト先の運営会社に対する名誉毀損に問われる危険性はある。

取り扱っている商品やサービスの品質に問題がないにもかかわらず、悪いとの嘘を言いふらせば、信用毀損罪や業務妨害罪も成立しうる。

名誉毀損や侮辱に関しては、された本人が正式に訴えなければ法的な問題にならない。だが、知らないうちに動画がSNSにアップされるなどして、「証拠」が簡単に拡散し、本人が簡単にネガティブ情報をキャッチできてしまう時代だ。この高度情報化社会では、公の場での言動には常に注意したい。

漫画やアニメなどの登場人物を真似たコスプレの制限

キャラクターもののコスプレについては、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用」(著作権法30条1項)している限りは合法である。自分で着たいコスチュームを自分で作って、外を出歩いている限りは問題ない。

ただし、そのような私的使用の範囲を超えて、多数の人からの依頼を受けてコスチューム作成を繰り返し、あからさまに儲けを出そうとすれば別問題である。著作物の無断複製として、制作者から提訴や告訴をされかねず、著作権法違反に問われるリスクが伴う。

その限度で “ハロウィンの自由”も制約を受けることになる。

オモチャの武器を持ち歩くことの制限

ハロウィンのコスプレに添える「持ち道具」について、リアリティを追求しすぎるのも考え物である。

たとえ刃が付いておらず、物を斬ることはできなくても、金属製で、実際の刃物と著しく似ている外観ならば、銃刀法で規制されている「模造刀」として携帯が禁止される。

たとえ発砲できなくても、金属製でピストルに著しく似た外観ならば、「模造けん銃」として、携帯どころか、入手することすら禁じられている(銃身を完全にふさぎ、模造品であることが一目で分かるよう、外側を白か黄に着色する処理を行わなければならない)。

また、明らかなオモチャであっても、武器に似たものを夜間に持って街中を歩いていれば、不審者として通報されて職務質問を受けたとしてもやむを得ないだろう。

なお、福岡県に限っては、中に爆薬などが入っていなくても、実際の手榴弾などと著しく似ている「模造爆発物」を公共の場所に放置する行為を処罰するルールがある(福岡県迷惑防止条例7条の2、11条2項、12条1項)。

本物そっくりの手榴弾を携帯して歩いているだけなら、福岡県内でもギリギリ処罰の対象外である。だが、警察の職務質問を受けるおそれは拭い去れない(その点は他の都道府県でも同じ)。

あまりに巨大なコスプレの制限

人々の目を惹こうとするコスプレ競争が、このままエスカレートしていけば、まるで紅白歌合戦の大物演歌歌手の衣装のごとき巨大なコスチュームを着た人が街に出現しかねない。

公道の上で、身体よりも遥かに大きな衣装を着用して現れたり、街中を移動したりすることは、その規模にもよるが「石碑、銅像、広告板、アーチその他これらに類する工作物を設けようとする者」、あるいは「一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」に該当しうる。

そのため、道路使用許可を事前に警察署へ申請しなければならない場合もあるだろう(道路交通法77条)。その限度で、ハロウィンのために皆を驚かせようとして、巨大なコスチュームを着て街を出歩く自由は、法的な制約を受ける。

【参考記事】パーティーが多過ぎる不思議

◇ ◇ ◇

祭りの日には、非日常の雰囲気を精一杯楽しむべきで、日頃のストレスを発散できる貴重なチャンスである。だが、せっかくの楽しい雰囲気をぶちこわさないよう、ハメを外しすぎないことも重要だ。

また、極端に人が集まれば、ゴミの処理も追いつかなくなる。せめてハロウィンの日だけでも、自分で出したゴミを持ち帰れるよう、とっておきのコスチュームと並行してゴミ袋を準備したいものだ。

[筆者]
長嶺超輝(ながみね・まさき)
ライター。法律や裁判などについてわかりやすく書くことを得意とする。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。2007年に刊行し、30万部超のベストセラーとなった『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)の他、著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)――こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。ブログ「Theみねラル!」

シェアする

フォローする