<上野動物園>ゾウおめでた 難しい繁殖、地道に努力

象の出産はまるで奇跡のようだと例えられます。出産数も少なく、動物園のゾウが妊娠し出産するのは珍しいようですね。また産まれた子象を自分の子供と認知せずに、そもまま足で踏みつぶしてしまう親もいるようなので、出産後もそのケアは慎重に行われます。万が一子育て放棄したとなれば、人間がミルクや食べモノを渡すことになりますが、やはりどんな動物も生みの親が一番であるべきです。子象にとっても親はどれなのかすぐにわかるはず。しかしあんなにも体の大きな像を出産となると相当な体力を消耗することでしょう。

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上野動物園(東京都台東区)のアジアゾウの「ウタイ」(18歳)が妊娠している。皇太子ご夫妻の長女愛子さまの誕生記念として、2002年に共にタイから贈られた雄の「アティ」(19歳)とのペアリングに成功した。ゾウは「繁殖が最も難しい動物」と言われており、順調に出産すれば国内最長の128年にわたるゾウ飼育の歴史がある同園でも初繁殖となる。「おめでた」の背景にあったのは?【斉藤三奈子】

【国内のアジアゾウの繁殖例と出生(予定)】

飼育しているゾウの繁殖が難しい理由の一つに雄の少なさがある。国内での飼育頭数は現在78頭で、そのうち雄は19頭。上野動物園では4頭のうち1頭しかいない。成熟した雄は、性ホルモンの分泌が増加し粗暴になる「マスト」と呼ばれる興奮期があり、飼育が難しいからだ。雌にも事情があり、同園と共同研究を進める岐阜大の楠田哲士(さとし)准教授(動物園動物繁殖学)は「排卵は年に3~4回しかなく、受精可能な日は排卵ごとに数日だけ」と説明する。

少ない繁殖の機会を逃さないために、雌の発情や排卵を正確に捉える必要がある。同園では血液を採取し、性ホルモンの増減を調べている。ゾウは慣れないと採血を嫌がるが、来日時、4歳だったウタイとは徐々に信頼関係を築き、耳から採血できるようにした。06年ごろからは性ホルモンの変化が見られた時期を見計らってアティとのペアリングを繰り返してきた。超音波画像に映りにくく、妊娠は胎児が7カ月になるまで確認できなかった。地道に取り組んできた飼育担当の乙津和歌(おとづわか)さん(40)は「来年6~7月予定の出産までの長いプロセスをじっくり観察してほしい」と話す。

国際間の移動は研究目的に限られるため、国内のゾウの高齢化が進んでいることも繁殖のハードルだ。このため、近年は繁殖の機会を増やそうと動物園間でゾウを移動させることもある。同園では09年に雌の「アーシャー」(推定39歳)を豊橋総合動植物公園(愛知県豊橋市)に“嫁入り”させた。父親になった経験のある雄とペアリングに成功し、11年に国内4頭目の出産につながった。アーシャーは年内には2頭目を出産する予定で、子育て中のゾウがいる市原ぞうの国(千葉県市原市)に移動し、1度目は放棄した育児に再挑戦する。

国内ではこれまで、神戸市立王子動物園や市原ぞうの国など7園で計10頭の子ゾウが誕生した。名古屋市東山動植物園などでは、若いゾウをペアで輸入し、繁殖に成功した。

一方、野生のゾウは減少傾向だ。世界自然保護基金(WWF)などによると、かつては東南アジアからインドまでのエリアに約10万頭が生息していたが、森林伐採などの影響で現在は3万6000~4万4000頭まで減った。この現状を受け、動物園では繁殖を成功させ、次世代につなげる役割が大きくなっている。楠田氏は「動物園で飼育されている動物は生息地の現状や文化を伝えるメッセンジャーでもある。妊娠などの出来事を契機に動物の減少要因を理解し、その改善に向けて何をすればいいか、社会が考えるきっかけになれば」と話している。

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