「死刑」と「無期懲役」のはざまで…裁判員たちの葛藤 母親の訴えに涙も 福岡小5殺害判決

重い犯罪を犯した者への罰として、無期懲役と死刑、どちらが加害者にとって重くのしかかるのかは人それぞれだと思います。息ながらにして塀の中で過ごし、大切な人に会うこともできずに、一生をそこで終えることになるのか、もしくは色々な後悔をいだきながら死という恐怖を目の前に突き出されるのか、個人的には死刑を宣告されたほうが辛いと思うのですが、被害者遺族はどう思うのでしょうか。もしも私の大切な人を奪われたとしたら間違いなく死刑を望むでしょう。それで殺された被害者が返ってくるわけではないのですが、少しでも気が晴れるのかなと思います。

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6人の裁判員たちは「死刑」と「無期懲役」のはざまで、大きく揺れ動いたのではないか-。3日、福岡地裁小倉支部であった福岡県豊前市の小5女児殺害事件の判決。殺人などの罪に問われた内間利幸被告(47)の審理をすべて傍聴したが、無期懲役を言い渡した判決内容からは、裁判員たちの苦渋がにじんだ。

「遺族が『死刑しかない』と訴えるのも当然」「更生は困難と言わざるを得ない」。判決文を読み上げる裁判長は、厳しい言葉を続けた。薄い青色シャツと黒いズボン姿で法廷に現れた内間被告は約25分間、伏し目がちに聞き入り、感情は読み取れなかった。

審理が開かれた5日間、傍聴席で被告の様子を見続けた。死体遺棄以外の全ての起訴内容を否認した被告は、終始消え入るようなか細い声で発言。問われている凶悪な罪と、目の前の様子にはギャップがあった。

一方で、彫りの深い顔に浅黒い肌。シャツの上から見ても分かる筋肉質な体は、法廷で「身長170センチ、85キロ」と語られた。「こんな人に押さえられたら逃げられないだろう」と感じた。大人の私でもそうなのだから、138センチの女児ならなおさらだ。

法廷で、検察からは犯行の詳細な様子が次々と明らかにされた。新聞記者の私でも耳をふさぎたくなる。普通の生活を送る裁判員の心痛を思った。
傍聴席からすすり泣く声、目を赤くする裁判員
被告は「静かにしてほしくて口を押さえた」と主張し、一貫して殺意を否認した。「自分のためにも(女児に)死んでほしくなかった」と繰り返した。

「女児と親しく、女児が(事件現場の知人宅に)『行きたい』と言ったので連れて行った」とも言い、親しい証拠として女児にもらったというキーホルダーを提出した。

そうした言葉は遺族の神経を逆なでし、裁判員が被告に注ぐ視線はさらに厳しくなり、法廷内の空気が変わっていくのを感じた。

検察側証人として出廷した女児の母親が、声を詰まらせ「かわいくて、本当に仲が良くて。一緒に服を買ったり音楽を聴いたりしていた」と話すと、傍聴席からすすり泣く声が漏れ、目を赤くする裁判員もいた。

同じ日、父親も被害者参加制度を使って証言台に立ち、被告に「亡くなった後までも娘の尊厳を傷つけている。汚し続けている」と静かな怒りをぶつけた。検察は死刑を求刑した。

個人的な感情と、公平な裁判ということで最後まで葛藤した」
判決は、被告の態度を「反省の言葉を口にした一方で、不合理な弁解をした。心から反省しているとは考えられない」と断じた。一方で、過去の判例を踏まえて死刑を回避し、無期懲役とした。

命をもって償いを求める死刑と、生きて償いを迫る無期懲役-。その差を分けたものは何だったのか。

判決後、ある女性裁判員は「市民の声や思いが反映されなければ裁判員制度は必要なのか」と語り、判決を決める評議で死刑を主張したことをうかがわせた。その上で、この女性は「事件の内容を知れば知るほど痛ましく、個人的な感情と、公平な裁判ということで最後まで葛藤した」と語った。記者としての私の葛藤も、この言葉と同じ所にある。
■両親「納得できない」
被害女児の両親は3日、「判決に対する遺族の思い」と題したコメントを発表。裁判官や裁判員に対し「被告人の弁解は不合理で全く信用ならず、心から反省していないと言い切ってくれた」と感謝した。

しかし、「死刑判決でなかったことは納得できない。娘の死後の状況だけでなく、生前に受けた苦しみ、痛み、恐怖を考えれば死刑しかない」と無期懲役の判決は受け入れがたいという考えを示した。

判決が「二度とこのような事件を起こさないために何ができるか、真剣に考える必要がある」とした点をとらえ、「このような事件にこそ死刑判決を下し、厳しい姿勢でのぞむことが、同じような事件を起こさないための大きな歯止めになる」と強調。「娘のためにも、二度と被害者を出さないためにも、遺族としては強く死刑判決を求めたい。検察官には控訴をお願いし、私たちもできる限りのことをしていきたい」と結んだ。

=2016/10/04付 西日本新聞朝刊=

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