<台風10号>耳に残る「助けて」不明の母捜す 岩手・岩泉

大切な人の“助けて”という声が聞こえているのにもかかわらず、何も助けてやれなかった自分に苛立ち、ただ相殺活動をじっと見守る旦那である菊地秀定さん。当時この地区ではまだ避難勧告が出されていなかったようです。土砂の流れの前では人は上がらうことができません。唯一対策として土砂災害が起きそうな時にその場を離れて非難することだけが、命を守る手立てになります。こういったときにいつどのタイミングで非難勧告を発令するのかが重要になってきますね。

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「お願い、無事でいて」--。台風10号の爪痕が残る岩手県岩泉町で1日、孤立した集落・安家(あっか)地区を流れる安家川の濁流に流された安否不明の小上(こかみ)八重子さん(74)の捜索が始まり、家族は祈るような表情で見守った。一方、地区に取り残されていた住民らは「一瞬の出来事。訳が分からなかった」と疲れた表情。町はこの地区に避難勧告を出したが、住民に伝わっていなかった。【駒木智一、小鍜冶孝志】

台風による大雨で、孤立状態が続いていた安家地区。流木や家具などが散乱する川沿いで、小上吉美さん(75)は重機を使って土砂を撤去する消防隊員を見守った。台風が近づいた30日、妻八重子さんと一緒に親戚宅に避難したが妻は一時的に家に戻った同日午後3時ごろ濁流に家ごとのみ込まれたという。

長男(45)が自宅で軽トラックに荷物を積んでいたとき、避難しているはずの八重子さんが家に入るのが見えた。水は足首がつかるほどになっていた。

長男は自宅に入ろうとしたが、水位が急上昇。1階に取り残された八重子さんに「2階に逃げろ」と大声で叫び、八重子さんも助けを求めている様子だったが、雨風の音で声はかき消された。濁流にのみ込まれる時、「助けてくれ、助けてくれ」という叫び声が聞こえるだけだった。

水が引いたのは31日朝。神奈川県から長女(52)が自宅に車で向かったが土砂に阻まれ、食料などを入れたリュックを背負って数キロ歩いたという。自宅近くの土砂が撤去され、重機が搬入されたのは1日午前9時すぎ。橋にひっかかった自宅のがれきを消防隊員が捜索し始めた。

救助作業は1日午後5時前、一旦打ち切られた。消防隊員から「目視の限りでは見当たらない」と告げられた。捜索は2日も続くが、吉美さんは「1日以上たって助かるわけがない。せめて見つかってくれれば」と涙ぐんだ。

安家地区に住む菊地秀定さん(71)は30日夕、家族3人で食卓を囲んでいた時、「ゴー」という音が聞こえてきた。瞬く間に土砂が玄関の戸を突き破って室内に侵入。妻孝子さん(70)と母ヤスさん(90)を連れ、必死に2階へ駆け上った。「本当に一瞬の出来事。訳が分からなかった」

午後3時ごろ、家の向かいにある安家川の水位を確かめるため外に出た。道路にあふれそうだったが、今までの経験から「避難は必要ないだろう」と判断した。町から避難勧告が出ていたが、避難情報は届かなかった。

道路は土砂や樹木で分断され、高齢の母を連れて徒歩で町に向かうには無理がある。水も無ければ食料もない。被害を免れた住民が食べ物を分けてくれた。1階は土砂や漂流物が散乱してどぶ臭い異臭が漂い、力を失ったという。

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