モルヒネに代わる「副作用のない」鎮痛薬を開発か、研究

今も尚、重い病気と戦い続けている患者はたくさんいるでしょう。その中でも痛みに耐えながら毎日折れそうな気持ちと諦めな心が勝ったり負けたりしている不安定な精神状態で、少しでも痛みを和らげるために使われていたのがモルヒネです。こちらは薬物ですが、量を調節し、医師が処方することで痛み止めとしての効果が得られますが、副作用ももちろんあります。この副作用とも付き合っていかなければならないのですが、現在副作用のない新たな鎮痛剤の開発がされているようです。少しでも早く痛みと戦う患者さんに新薬が使われたらいいですね。

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仏パリで撮影された錠剤(2012年9月13日撮影、資料写真)。【翻訳編集】 AFPBB News拡大写真
【AFP=時事】科学者チームは17日、モルヒネと同等の鎮痛効果を持つが、副作用がないと考えられる合成薬剤を開発したと発表した。モルヒネなどのオピオイド系鎮痛薬は強い副作用があるため、非常に危険で中毒性が高いとされている。
英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された研究論文によると、研究チームが用いたビッグデータの手法は、革新的な薬剤の開発に前途有望な道を開くものだという。
「数兆」に及ぶ候補のふるい分けによって同定されたこの新化合物は、マウスを用いた実験で、痛みの抑制作用を誘発する脳内の既知の分子経路を活性化した。
だが、この化合物は、モルヒネや、オキシコドンやオキシコンチンなどの処方薬とは異なり、正常な呼吸を減速したり阻害したりする可能性のある第二の経路を活性化することはなかった。
オピオイド類による呼吸の抑制により、米国だけで毎年約3万人の死者が発生している。米国では、オピオイドの使用と乱用がまん延のレベルにまで達している。
また「PZM21」と命名されたこの新薬は、実験用マウスに依存性を形成しなかった。マウスはモルヒネや処方鎮痛薬に対して、人間と同様に容易に中毒になる。
実験では、PZM21を投与される小部屋と、中性食塩水を投与される小部屋のどちらかをマウスが好む傾向はみられなかった。
研究チームは、PZM21が「呼吸障害の明らかな排除を伴う、長く持続する無痛覚」をもたらすと総括した。
さらに、この新化合物の3つ目の利点は、便秘を引き起こさないことだと、研究チームは指摘している。米国では、オピオイド類に起因する便秘症を緩和するための薬のコマーシャルがテレビで放映されている。

アヘンとその誘導体は、痛みを和らげる(さらには多幸感をもたらす)ために4000年以上前から使われてきた。
近代医療の時代になっても、アヘン原料のケシから抽出されるモルヒネは、手術後の回復のためや戦場などで、最適の鎮痛薬として今なお用いられている。

論文の主執筆者3人のうちの一人で、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)薬学部のブライアン・ショイシェット(Brian Shoichet)教授は「だが、これも危険であることは明白だ」と話す。
「標準的なオピオイド類に代わる、より安全性の高い鎮痛薬を探求する取り組みが数十年続けられている」
こうした取り組みの大半では、副作用を取り除くために薬剤の化学構造に手を加えることが試みられてきた。
ショイシェット教授と、米スタンフォード大学(Stanford University)、米ノースカロライナ大学(University of North Carolina)、独フリードリヒ・アレクサンダー大学(Friedrich-Alexander University)などの共同研究者らは、従来とは根本的に異なるアプローチを採用した。
■「完璧な薬」を目指して
研究チームは、脳内にある「オピオイド受容体」に新たに着目した。この受容体は、活性化されると痛みの抑制作用を引き起こす化学反応を誘発する。
錠を開ける鍵のように、受容体とうまく「ドッキング」できる分子だけが機能すると考えられる。
だが、中毒や呼吸障害を回避するために、この同じ分子は、モルヒネがするような、望ましくない反応を誘発する2番目の受容体とのドッキングをしないようにしなければならない。
「薬剤発見の従来型のアプローチでは、化学物質の小さな箱の中に閉じ込められてしまう」とショイシェット教授は説明する。
「だが、対象とする受容体の構造を始点にすると、こうした制約をすべて取り払うことができる」
研究チームは、コンピューターシミュレーションを用いて、市販の化合物300万種と、それぞれの化合物が取り得る100万パターンの立体配置について、受容体に最もよく合うのはどれかを調べる試験を行った。
実験室内で数兆通りに及ぶ選択肢をくまなくチェックするには、膨大な費用と時間がかかると考えられる。

約2500の分子が、この試験を通過した。
オピオイド類との類似性が高すぎる分子を除外すると、23個しか残らなかった。
さらに詳細な分析の結果、「悪い」分子経路を誘発せずに「良い」分子経路を活性化する分子は、それらの中の1個だけであることが分かった。この場合にも、分子に対してさらなるカスタマイズ処理を実行する必要があった。
カナダ・マギル大学(McGill University)精神医学部のブリジット・キフェル(Brigitte Kieffer)教授は、ネイチャー誌に掲載された解説記事で「コンピューターを用いた、構造に基づくふるい分けが、薬剤発見のペースを加速することはほぼ間違いない」と述べている。

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