なぜスシローは「スイーツ」に力を入れるのか

別にスシローだけではありませんが、昨今の100円寿司チェーン店は驚くほどファミレス化が進んでますよね。まだうどんやカツ屋などの方が純粋な勝負に出ているんじゃないですか?尤も確かにそれら店舗と比べれば回転さえる為の設備の都合上、どうしても内装が広くなり、多様化に走ったほうが道が開けというのは理解は出来るんですけどね。あと提供される料理は小さいものの、必要な材料の数は圧倒的。今更何種類かジャンルを広げたくらいでは痛くもないのでしょう。ただ水物であまり腹を膨らませたくない都合上、麺類や汁物はありだとしても、ドリンクバーまでは始めないでしょうけどね。ちなみにスシローに関する個人的な印象としては、具ではなく面白みと言う意味でのネタは感心させられるものの、寿司一貫としてのコストパフォーマンスは低めなので、やや高くつくイメージ。業界人気が高いのは少量でも満足できるお子さん連れを前提とした家族をターゲットのこころを掴んだ結果でしょうかね?

 回転すしチェーンの雄「スシロー」(運営はあきんどスシロー)が、スイーツと国産天然魚に力を入れている。

部活帰りにスシローへ来店する学生が増えている

 11月15日より投入した、国産天然魚とアップルパイの新メニューにより、既存店の売り上げが再浮上している。天然魚は全国に海産物産地直送ネットワークを持つ「羽田市場」とタイアップ。アップルパイは部署横断のスイーツ好きが集まった「カフェ部」新設によるアップルパイ専門店「グラニースミス」監修の商品で、いずれも従来の回転すしの発想を打破する商品だ。

 11月の既存店売上高は105.4%と、5~10月までマイナスに落ち込んでいたのが半年ぶりに前年同月を上回った。新メニューの投入効果が顕著に表れている。既存店客数は101.4%、既存店客単価も104.0%といずれも前年同月より増加した。

 既存店の売上減を、新規出店でカバーして成長する状況が半年にわたって続いたことから、スシローの成長性に陰りが見えているのではないかとの観測も広がりつつあった。しかし、魅力的な商品の投入で懸念を払拭(ふっしょく)した。

 あきんどスシローの水留浩一社長によれば、「売り上げの伸びと単価の伸びは相関関係がある。メニューの満足度が高まれば、お客はいつもよりもう1品多くつまんで行こうかという気になってくれる」と、天然魚とアップルパイに寄せられた反響の大きさに、今後の方向性の手応えを得た。「うまいものを出すことにすし、サイドメニュー共にこだわり、上流から見直す」としており、競合他社に比べて1.4倍以上多い日商(一店舗当たり)をさらに引き離しにかかっている。

 今回はスシローが注力する商品改革について考察していきたい。

●スシローのサイドメニューが女子大生に人気

 まずは、デザート開発を専門に行う「カフェ部」新設の背景について見ていこう。

 スシローに限らず、最近の回転すしチェーンのサイドメニューは、ラーメン、うどん、スイーツ、コーヒーなどといった、従来では提供していなかった商品の導入を競い合い、新たな回転すしファンを開拓している。

 言葉を変えれば回転すしチェーンは、ファミレス化しており、すしを食べなくてもラーメン店やカフェとして利用する人が増え、市場が拡大している。スシローは中でもスイーツの評価が高く、定番商品となっている「カタラーナアイスブリュレ」「北海道ミルクレープメルバ」「あったかフォンダンショコラ」(冬限定)といった180円の商品がコストパフォーマンスが抜群で、これらを目当てに来店する人も多い。

 また、“ポテロー”の異名を取るほど「フライドポテト」の人気が高い。100円というお手頃価格もあって、女子大生が注文するスシローのメニュー1位とのリサーチもあるほど、若者に厚く支持されている。

 このようなおやつが目的で、下校時間、部活帰りにスシローへ来店する学生たち(特に女子大生)が増加しており、ランチとディナーの間のアイドルタイムの集客数が上がっている。ここがまさに、スシローがスイーツを強化した理由である。

 アップルパイが目的で来店したとしても、小腹が減ればすしの1つもつまむし、スシローに行く習慣ができれば、結婚して子どもが生まれても家族で継続して利用してもらえるだろう。

 実際に学生たちからは、「回転すしは友達と長い時間おしゃべりができて居心地がいい」と喜ばれており、そのニーズをスシローはよくつかんでいる。学生たちは低価格ファミレスや、ハンバーガーなどのファストフード店にも行くが、そればかりだと栄養が偏るイメージがあり、健康に良さそうな魚をメインとする回転すしを選択肢に入れ始めている。

●部署横断で「スイーツ好き社員」が開発

 アイドルタイムに学生を集客するために新設したカフェ部では、「おじさんが商品を決めるより、スイーツが本当に好きな人たちが開発した方が、より良い商品ができる」(水留社長)として、役職や部署を取り払い、通常業務とカフェ部の業務を両立させる方策を取った。商品部、営業、広報・宣伝などの部署が混交した6人ほどでカフェ部を構成している。

 カフェ部の村井友梨香部長は役職のない一般社員。「偉い人だけで組織をつくってしまうと、結局おじさんの意向が反映されてしまう」(同)と、新しい発想を生み出すためのに多様な人材で取り組んでいる。

 デビュー作の「グラニースミス監修 アップルパイ」は、ファンゴーが経営するアップルパイ専門店「グラニースミス」のエッセンスを味わえる期間限定商品だ。「グラニースミス」のカフェではアップルパイのカットを400円で提供しているが、スシローでは280円と安い。

 スシローでは2016年11月に、東京・代官山に本店を構えるパンケーキ専門店「ベリーファンシー」監修の「苺のふわとろパンケーキ」を期間限定で販売。売れ過ぎて、3日後には販売休止に追い込まれるほどの反響を呼んだ。翌12月には、「たっぷりマンゴーのふわとろパンケーキ」を第2弾として発売している。

 代官山などに店舗を展開するハワイアンカフェ&ダイニング「アロハテーブル」監修の「ハワイアンフレンチトースト」を販売し、これも好評だった。

 東京の有名スイーツ店がスシローとコラボする理由としては、全国に店舗網を持つスシローを通して、商品の知名度を全国に浸透させて来店につなげたい意向がある。

●「スシロー×羽田市場」プロジェクトで、地元で獲れた旬のネタを

 一方の地元の旬の天然ものを提供する「スシロー×羽田市場」プロジェクトは、本業であるすしの強化策である。

 スシローは「世界の海からいいネタ100円プロジェクト」を2016年11月にスタート。1皿100円で極上ネタを食べたいと願う顧客に向けて、商品調達ルートを見直し、12種の商品を送り出してきた。実はこれとは別に、多少高くてもいいから地元で獲れた旬のネタを食べたいというニーズも高まってきた。

 例えば東京では金沢から進出した「金沢まいもん寿司」「もりもり寿し」、北海道の「根室花まる」、四国・愛媛の「すしえもん」などの地方の旬のネタを提供する回転すしが人気になっており、1皿200~300円でも行列ができている状況だ。

 そこでスシローでは、テスト的に大阪と千葉の店舗で地元で獲れたネタを投入。すると、「こういうネタが食べたかった」と大きな反響があったという。

 しかし、全国470店近くあるチェーンにどうやって地元ネタを流すかは難題だ。こうした背景から「スシロー×羽田市場」プロジェクトが立ち上がった。

 羽田市場は羽田空港内に鮮魚加工センターを持ち、全国の漁師から直接仕入れた魚介を飲食店に流す仕組みを築いており「超速鮮魚」のブランド名で鮮魚の流通革命に取り組んでいる。中間流通を通さないので朝獲れた魚がその日のうちに飲食店に並ぶ。

 「天然魚というものは、ある時どこかで大量に湧くことがある。どこでどんな魚種がどれだけ湧くのか予測もつかないが、突き止めたところでなかなか一朝一夕に漁師さんが魚を売ってくれるものでもない」(水留社長)。

 そこで各地の漁港にネットワークを持つ羽田市場とタッグを組み、スシローの商品部も一緒になって営業に動いて行く。スシローは羽田市場に出資しているが、子会社化は考えておらず、むしろ自由な活動でさらに漁師ネットワークを広げて、目利きの精度をより一層高めてもらうことに期待しているという。

●従来の組織、仕入れに捉われない

 天然魚の性質上、全てのネタを全店に流すことはできないが、北海道で獲れた「生甘えび」(180円)はほぼ全店で出せているそうだ。長崎で獲れた「剣先いか」(180円)、九州、山口などで獲れた「活さざえ」(280円)などを今は提供しているが、その日の漁次第で、海が荒れたら入荷できない場合もある。スシローが魚の情報をいかにキャッチして、100円は無理としても、180円、280円の安価で出し続けられるか。

 顧客からの喜びの声を聞くと現場のパート、アルバイトの士気も上がり、活気が出るという。その活気がさらなる好業績へと循環していく。

 スシローでは今後、看板であるタイ、ハマチなどの100円の養殖魚の仕入れにメスを入れ、“スシロー魚”を作っていく方針。既に米では、シャリを提供する農家の田んぼに“スシロー米”の旗を立てて、生産段階からの差別化を行っているが、その魚版と言えるだろう。

 いずれにしても同社は、親会社・神明による元気寿司との統合、店舗倍増計画も視野に入れながらも、スシローは安くてうまいという評判を維持するべく、従来の組織、仕入れに捉われない未知の領域へと舵を切った。

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