高橋一生 ブレークも変わらず「役に隠れたい」諦めの境地から演技の魅力発見

どんな役にもなりきり個性をけすことのできる俳優さん。これこそが名わき役で引く手あまたになる秘訣でしょう。優しい役から、血も涙もない悪役まで、色々な役を演じている彼だからこそ、次のドラマではどんな役になっているんだろうと、気になります。しかし今季のカルテットというドラマは第一話を見た限りでは、ちょっと駆け出し不安です。微妙な空気感を読み取りながら見ていくドラマのかもしれませんが、どうもあの間合いが苦手な私はもっとわかりやすいくらいのドラマの方が見やすくて好きです。

◇高橋一生インタビュー(下)

話題作から引く手あまたの俳優・高橋一生(36)。今クールはTBS「カルテット」(17日スタート、火曜後10・00)に登場。松たか子(39)満島ひかり(31)松田龍平(33)の演技派とともに、長野・軽井沢にある別荘で一冬の共同生活を送り、弦楽四重奏のカルテットを組む30代男女4人を演じる。ブレークした現状には感謝しつつも「今まで通り、お芝居をやっていくしかないと思います」と変わらない。今後についても「もっともっと役に隠れていたいです」と高橋一生というバイアスを“消したい”意向を示した。また、10年前から「あきらめの境地」にあったと、意外な言葉が飛び出した。

【写真】「カルテット」で高橋一生がヴィオラを演奏するシーン

今月9日、東京都内で開催された今作の試写会。高橋がステージに現れるや、客席からは女性の歓声がわき起こった。

昨年だけでも、テレビドラマはフジテレビ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「僕のヤバい妻」「私に運命の恋なんてありえないって思ってた」、テレビ朝日「民王スペシャル~新たなる陰謀~」「民王スピンオフ~恋する総裁選~」「グ・ラ・メ!~総理の料理番」、NHK BSプレミアム「プリンセスメゾン」など。映画は大ヒット作「シン・ゴジラ」、舞台は故蜷川幸雄さんが演出した「元禄港歌―千年の恋の森―」、チケット争奪戦になった「レディエント・バーミン」と途切れることなく出演した。

もともと実力派として多方面に活躍していたが、2014年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」やフジ月9「信長協奏曲」を経て、15年にテレビ朝日「民王」の秘書・貝原茂平役が評判を呼び、スピンオフが制作されるなどブレークした。

現在の人気ぶりについて聞くと「ただただ、ありがたいですね」と感謝しながらも「どうやってお返しをすればいいのかというと、何か加えることも、引くこともなく、ただただ今まで通り、お芝居をやっていくしかないと思います」と従来の姿勢を貫く構え。「実感はない?ですね。インタビューなどで、そうおっしゃっていただくと、そういえば(出演が)途切れないなと。ただ、あまり自己認識もないですし、そういうことに思考を割くカロリーを、仕事の部分に使っちゃっているので」とした。

役者の道に進んだのは、8~9歳の頃に入った児童劇団がきっかけ。当時はピアノなども習っており「その流れで、母親と祖母に入ってみたら?と。習い事感覚で、知らず知らずのうちにお芝居に触れていました」と振り返る。以来、「何となく続いている感じ」という俳優業。25歳の頃、あきらめの境地にあったと“衝撃告白”した。

「他の人と比べたことがないから分かりませんが、僕の場合、こうなったらいいなと思っていた時期があって、それがことごとく全部叶わなかったので。例えば、この小説の大ファンで、この役を演じてみたいと思っても、そうならなかった場合ですよね。もがいても、その通りになったことがないので。あるタイミングから、あきめているのかもしれないです。そういう悔しい思いをしてきて、僕は『夢、叶わないや』と思っているから。だから、放おっておいちゃったんですよ。逃げたわけじゃなく、どうせ叶わないから、別に(こうなりたいと)考える必要もないと思っちゃって。自分で地図を描いたところで、地図通りに進んだことがないので、あきめています。(地図は)周りの人が作ってくださると思っています。25の時にスパーンと切れたわけじゃなく、段階的にどんどん、あきらめろ、あきらめろ、と言われたんですね。誰に?起こってくる物事に」。現在の活躍からは想像しがたい葛藤を抱えていた。

それでも、30歳を過ぎた頃、演技のおもしろさが分かってきた。「自分が演じた役からフィードバックをもらえることが多いんです。現実には起きないことを自分が肉体を通して演じることによって、いくら役とはいえ僕に戻ってきます。例えば、時代劇で戦国時代に殺されると思ったという肉体的な感覚、今回の楽器を弾くこともそうですが、そういうものを次の別の役に生かせたりするわけです。無尽蔵に無限に何回もリサイクルできる、その感覚が最近分かってきて、これは凄いことかもしれないなと。つまり、僕の人生経験なんかなくても、誰かになっていることによって擬似的な人生経験ができるわけです。それを次の別の役に生かせたりするというのは凄いなと思って。そこでやっと『おもしろい』と思えたのかもしれません。割と最近ですね。30超えたぐらいからです」

あきらめがあっても、やはり芝居に魅力があるから役者は続いた?と聞くと「でも、裏表。うまくいかず、お芝居自体が死ぬほど憎たらしいこともあります。憎たらしいということは、たぶん好きなんでしょうね。逆説的な答えの求め方ですよね」と独特の表現をした。

今後についても「もっと反比例していきたいんですよね」と持論。「あの役を演じたのは高橋一生と言われるじゃないですか。そうなること(役と高橋一生が結び付くこと)をどんどん離していきたいんです。どうしても『高橋一生が演じた』というバイアスがかかるので、あの役を演じたのは高橋一生だっけ?と言われたいんですね。それぐらい僕は自分のこと無個性だと思っているので。もっともっと役に隠れていたいです」とした。

撮影を並行中のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(日曜後8・00)で、さらに知名度が上がるのは確実。それでも作品や役に染まりたい。そのカメレオンぶりが注目される。

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